アーミッシュの子供達
今回ご紹介するのは、2000年頃にアーミッシュの村を訪れた体験をもとに描かれた作品《アーミッシュの子供達》。作者が数十年の時を経て手がけたこの作品には、文明の利器から距離を置き、自然と共に生きる人々の姿が静かに息づいています。
“昔の写真を見返していたとき、ふと、あの時に出会った子供たちの表情が描いてみたい—”
そんな思いが、本作を描くきっかけだったと語る作者。電気を使わず、質素で規律ある暮らしを守り続けるアーミッシュの生活に触れた旅の記憶が、今回の制作に繋がっています。
本作で特にこだわったのは、子供たちの「純粋な姿」。過度な演出を避け、素朴な仕草やまなざしを丁寧にすくい取ることで、観る者に静かな余韻を残します。
画材にはパステルを使用。柔らかな色彩表現にこだわりつつも、画面がぼやけすぎないように、鉛筆の線を要所に加える工夫も。とくに人物画、なかでも「手」の表現には苦労があったそうで、構図の中でもっとも時間をかけた部分だといいます。
完成した作品について、作者は控えめに「70点」と自己評価を語っています。しかし、そこには技法的な挑戦と共に、作品を通しての自己発見——「表情や雰囲気を描くには、パステルの柔らかさと線のシャープさ、その両方が必要だと気づいた」がありました。
《アーミッシュの子供達》は、ただの懐古でもドキュメントでもありません。
私たちが忘れかけた「まっすぐな目線」や「穏やかな時間」を思い出させてくれる、そんな一枚になるかもしれませんね。
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